16年前のちょうど(アメリカ中部夏時間)8時過ぎごろ電話がなった。
「誰だよ~、朝から」と思いつつ、電話をとると母からだった。
「寝とったとね。テレビつけなさい!」って。「テレビ?、ちょっと待ってね。」
テレビをつけるとビルに突っ込んでいる飛行機が。
「何これ、映画?」って聞くと、「ニューヨークのビルに飛行機が突っ込んだとよ。これさっきあったとよ。」って。2回目の突入のものだった。興奮した声のアナウンサーの声が機体が突入する映像と共に流れた。はっきりとその映像を頭でリプレイすることができる。青い空をバックにそびえ立つ世界貿易センタービルに突入する機体。
映画のような出来事に私の頭はフリーズ、テレビから目を離すことができなかった。
「ニューヨークはそこから遠いのは分かっとうけど、気をつけなさいよ。何があるかわからんけん。」という母の声で現実の世界に引き戻された。
「うん。わかった、ありがとう。大丈夫だよ。」と電話をきった。
その後ルームメイトを叩き起こした。「アメリカやばい!!」って。きっと自分だけでは頭の中の整理ができなかったのだろう。寝ぼけてるからとかではなく、通常ではあり得ないことが起こっていることが夢のような映画のような感覚だった。
テレビでは何が起こってるのかをずっと映し出していた。早朝のクラスがあったもう1人のルームメイトが帰ってきた。「クラスがなくなって、家で待機になった。」って。テレビでも家にもどれ、街中に特に公共の建物に近づくなといっていた。
自分が住むアメリカで何が起こっているのか、どうしてこんなことが起こっているのか、全く理解ができなかった。
テレビには世界貿易センターがずっと映し出されていた。ペンタゴンへの旅客機の突入も速報で流れた。黙々とあがる煙、逃げ惑う人々。どのくらいたったのか、一つ目のビルが崩壊した。
テレビを見ていることが辛かった。もう見てられない。。。この現実を見続けるのは苦しかった。
ダウンタウン近くに住んでいた私たちはコーヒーショップに行くことにした。ダウンタウンが静まり返っていた。道では号外が配られていた。初めて手にした号外だ。
とりあえずコーヒーを飲み、多少すべてを消化して家に戻った。当時、大きなお店や公共の建物、学校などは閉まっていた。
家に戻り、現状が気にはなるもののテレビを見る気力は湧かなかった。テレビじゃなくビデオを流してみたが、楽しめるような気分でもない。自然災害ではない人災をテレビを通してではあるが目にし、自分が住んでいる国でこのような事が起こっているということが奇妙で嫌な感覚を引き起していた。
家の近くには大きな通りもあり、コミュニティーセンターもあった。
車のホーンの音や人の声が外からいつも以上に聞こえてくる。
何事かと窓から覗くと沢山の人がプラカードや段ボールでつくったボードを身体にくくり付けさわいでいる。よく見ると”BLOOD”の字が見えた。大勢の人が歩道にあふれている。献血を集めていることが分かった。ラジオで流れてた「血が必要です。献血をお願いします」と言う呼びかけを思い出した。ルームメイトらとうちらにできることがあった!と、早速献血にでかけた。
センターに歩いて行くとかなりの人たちが並んでいる。
受付で名前を書こうとすると、「数日間はもう献血の人でいっぱいです。また、一週間後とかしばらく日をおいて来てもらえる?」って。
これを聞いたときに、アメリカってすごいな~と本気で思った。
ほんの数時間のうちに沢山の人が行動を起こしていたのだ。私が住んでいたのはかなり小さな田舎町。他の町や地域でも同じことがきっと起こっていると感じた。私が頭と感情の整理を試みている間に、沢山の人々はスベキこととデキルことを行動にうつしていたのだ。
そして頭に浮かんできたのは「日本でもし同じことが起こったら、日本人もこれだけ即行動に移せるのか?」ということだった。この疑問はこの後も何度も頭に浮かんでくる、または話のテーマになるものだった。
この16年、この911におけるたくさんのドキュメンタリーや映画が放映された。また当時の映像が流れることも沢山あった。私は一度も見ていない。私の周りのアメリカ人の友人もこのときの映像を見ることができない、と言っていた。
たくさんの人たち、アメリカの友人らとこの事を話す機会もたくさんあった。それなりに消化してきたつもりだが、まだどこかで消化しきれていないのかもしれない。
ここで書くことで、再度自分の記憶をリプレイした。今でも鮮明に記憶されている。
この日が大勢の人生を変えた。そして、その後の戦争が大勢の人生を変えた。私の友人や知人も洗浄へと行った。
自然災害も本当につらい。
でも自然を相手に戦争はできない。
人災は人災を呼ぶ。
戦争、となった後のニューヨークの街頭インタビュー女性が言ったことが頭に残ってる。
「戦争で全てが解決できる訳じゃないと思う。憎しみが憎しみを呼び、またその次の世代へと受け継がれて行くだけだと思う。」
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